こども庁への思い

「こども庁」というネーミングには、子どものことを第一に考え、誰1人の子どもも取りこぼしませんというメッセージが込められています。さまざまな事情で家庭が地獄である子どもでも、家庭が大好きで大切に思っている子どもでも、家庭が存在しない子どもでも、ひらがなしか読めない小さな子どもでも――。

下記に、これまでの経緯を記します。長くなりますが、お付き合いいただければ幸いです。

1)「子ども家庭庁」が「こども庁」になるまで

自民党若手議員の方々が「子ども家庭庁」の創設を目指し、今年の2月からはじめた議員向けの勉強会、「チルドレンファーストの子ども行政のありかた勉強会〜子ども家庭庁創設に向けて〜」を開催しました。その第6回講師として呼ばれたのが、被虐待経験のある私、風間暁です。
これまでに全部で27回行われた勉強会では、私以外にも子どもに関わるさまざまな分野の当事者や専門家が、子ども家庭庁の創設に向け、その体験や知識、時間、労力を使いました。
私はといいますと、自民党有志の議員の方々に向け、被虐待経験者からみた社会的養護の課題や、「子ども家庭庁」創設の必要性、問題点などについて話をさせていただいたのです。

勉強会を主宰する山田太郎議員から講師の依頼をいただいたとき、私はすぐに仲間の被虐待経験者や、関わっている子どもたちから意見を募りました。「どう思う?」「どうしたらいいかな?」「何を伝えてきてほしい?」。
当日使うスライドも、宗教虐待の被害にあったデザイナーの仲間と一緒に作りました。

少なくとも私や、私が話を聞いた被虐待経験者にとっては、家庭・保護者こそが加害者です。もちろん家庭という場所は地獄でした。つまり、私たちの目に映る庁の名称は、「子ども地獄庁」です。だから、私は勉強会当日、自分と周囲の仲間たちのそういった経験からくる痛みを、率直に伝えました。

すると、その場にいた議員の皆さんは、その声を重く受け止めてくださった。主宰のひとりである自見はなこ議員も、その場で「子どものための庁なんだから、ひらがなで子どもにも読めるようにしよう!」と発言してくださった。
そして、翌日から勉強会の名称も「こども庁創設に向けて」と変更してくださり、あらゆる状況下に置かれた子どもたちのことを想像して、「こども庁」の名称で進めていくことになったんです。

私は、ここまでのプロセスそのものにも大きな意味と価値があると思っています。家庭や社会で無いものとして扱われ続けてきた私たちの声が届いたのですから。

2)「こども庁」が「こども家庭庁」になるまで

一番最初の報道(12月14日、共同通信)では、自民党が「子ども家庭庁」という名称に変更する可能性を示唆するとともに、その理由を「伝統的家族観を重視する自民党内保守派への配慮」と書かれていました。
私はこれを見たときに、まず「子どもや被虐待者への配慮より、党内にいる大人への配慮が優先される構造なんだな」と思いました。

次に12月15日、自民党内で会合が開かれました。そこで、「子どもは家庭を基盤に成長する。家庭の子育てを支えることは、子どもの健やかな成長を保障するのに不可欠である。よって家庭を付け加える。」という理由が示され、自民党内では「こども家庭庁」という名称でいく方針が決定したんです。

項目1)に記載したような経緯を経ての名称「こども庁」を覆し、「こども家庭庁」に決定するということは、地獄であるということを伝えた被虐待経験者に対し、「こども地獄庁を許容しろ」と言っているのと同義です。
せめて説明や対話の機会を設け、納得できる名称変更の理由を明示していただきたかった。しかし、今に至るまで、そういった気配もありません。

ただ、これまで実際に私や他の講師の方々の話を聞き、勉強を積み重ねてこられた若手議員の方々、中でも勉強会主宰のひとりである山田太郎議員は特に、今も名称に関して闘い続けています。ご本人も、「こども庁という名称をとても大事にしている」と仰っていました。また、「こども家庭庁」の名称に決定した自民党の会合でも、「こども庁」という名称でいきたいと声を上げた議員は数多く、中には重鎮であるご高齢の議員さんもいたようです。そのため、少なくともこの署名にご協力くださる方々は、差別的な発言等で議員らの尊厳までをも否定する行為はお控えくださると幸いです。

「こども庁」にしてほしい理由

たかが名前、どっちでもいい、そんな声も聞こえてきます。しかし、上記のような経緯を持つ「こども庁」のネーミングは、単なる名前ではありません。
私は議員の皆さんや、当事者、専門家の方々と、たくさんの対話を重ねました。その中で感じるのは、「こども庁」というネーミングに、たった1人の子どもだって取りこぼしませんという、大人たちの決意と覚悟が込められているということ。

家庭が地獄である子どもでも、家庭が大好きな子どもでも、家庭が存在しない子どもでも。逆に、さまざまな事情で子どもがいない家庭のことを考えても、「こども庁」というネーミングなら、いたってシンプルに「私たちは子どものことを考えています」という理念が伝わりやすいはずです。

また、当然ながら子どもは、親とは違った人格を持っています。
子どもにも権利があり、個人として尊重されるべき存在です。

親に付随する要素でもない、家庭という枠組みの中だけに収まるでもない、子ども個人に向けた優しいまなざしを、「こども庁」という名称から感じます。

さらに言えば、子どもという存在は、社会で守り育てるべき存在です。
家庭という場所だけで背負おうとすればするほど、かえって追い詰められていく保護者が増えやすくなり、その皺寄せが子どもにいくリスクにもなりえます。

家庭への支援ももちろん必要なことではありますが、それと同様、学校や地域というコミュニティへの支援も同じだけ必要です。子どもが属するコミュニティは子どもに大きな影響を与えますから、そうなってくると、「こども家庭学校地域庁」などということにもなりかねませんね。

私は、この名称をめぐる議論を、単なる名前の問題ではないと思っています。これは大人が子どもをどう捉えるか、どのような眼差しで子どもを見つめているかということでもあるし、「マイノリティである被虐待者に配慮することはできません」という一部の自民党議員が出した結論への抵抗です。

最後に

長くなりましたが、ご賛同いただける方はぜひ、署名での応援をお願いいたします。

この署名活動に留まらず、来年の国会で名称が決定されるまでの間、できることはなんでもやっていきたいと思っています。
活動や動きに関しましては、キャンペーンの進捗より随時ご報告させていただきます。

何卒よろしくお願い申し上げます。

家庭単位じゃなく、子ども個人に目を向けてほしい!再度「こども庁」に名称変更を!

「こども庁」への名称変更を求める関連団体・専門家ネットワーク(仮称)

「こども庁」への名称変更を求める関連団体・専門家ネットワーク(仮称)

活動へのご支援よろしくお願いします